○八潮市みんなでいじめをなくすための条例

平成27年9月18日

条例第26号

全ての子どもは、かけがえのない存在であり、未来の宝である。

子どもの心身を傷つけ、人権を侵害することとなるいじめは、どのような理由があろうと絶対に許すことのできない卑劣な行為であり、それぞれの子どもが一人の人間として尊重され、その成長が保障される環境を整備することは、全ての者に求められる喫緊の課題である。

本市では、子どもたちが尊い命を大切にし、友達や周囲の人に対する思いやりの心を持ち続けることを誓う「八潮市子ども憲章」を定めるとともに、学校においては、いじめを「うまない、見のがさない、ゆるさない」との強い意志に基づき、「いじめ撲滅3原則」を掲げ、子どもたちが自ら学び、取り組むよう訴えてきた。

いじめは、子ども同士のささいなトラブルに起因して発生し、大人の目の届かないところで行われるなど、どの子どもにも、どの学校にも関係するとても身近で、重要な問題であるとの認識に立たなければならない。

ここに、私たちは、いじめをなくすためには、いじめを行わない子どもを育てることが最も大切であるとの考えの下、子どもたちが安心して生活し、健やかに成長できるまちを実現するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)の趣旨を踏まえ、いじめの防止等(いじめの未然防止、いじめの早期発見及びいじめへの対処をいう。以下同じ。)に関する基本理念を定め、子ども、市、市立学校、保護者、市民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、いじめの防止等のための基本的事項を定めることにより、子どもたちが安心して生活し、健やかに成長できるまちを実現することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) いじめ 子どもに対して、一定の人的関係にある他の子どもが行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった子どもが心身の苦痛を感じているものをいう。

(2) 子ども 市立学校に在籍する児童及び生徒その他これらの者に準ずるものをいう。

(3) 市立学校 八潮市立学校設置条例(昭和44年条例第1号)第2条に規定する小学校及び中学校をいう。

(4) 保護者 親権を行う者、未成年後見人その他の者で、子どもを現に保護するものをいう。

(5) 市民 市内に居住し、又は市内に勤務し、若しくは市内で学ぶ個人をいう。

(6) 事業者 市内で事業活動を行う個人、法人又は団体をいう。

(7) 関係機関等 警察、児童相談所、他の地方公共団体その他のいじめの防止等に関係する機関及び団体をいう。

(基本理念)

第3条 みんなでいじめをなくすためには、いじめが全ての子どもに関係する問題であるとの認識に立ち、いじめを行わない子どもを育てなければならない。

2 みんなでいじめをなくすためには、子ども、市、市立学校、保護者、市民及び事業者がそれぞれの責務及び役割を自覚し、連携を強化し、市全体でいじめの防止等に取り組まなければならない。

(子どもの役割)

第4条 子どもは、いじめについて、互いに考え、共に学び合い、いじめを正しく理解するよう努めるものとする。

2 子どもは、互いに思いやり、共に支え合い、いじめのない明るい学校生活を送るよう努めるものとする。

3 子どもは、いじめを傍観せず、いじめを受けている子どもの立場に立って行動するよう努めるものとする。

4 子どもは、いじめを受けた場合には、一人で悩まず、家族、学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する小学校、中学校及び特別支援学校(幼稚部及び高等部を除く。)をいう。第7条第4項及び第5項において同じ。)、友達又は関係機関等に相談するものとする。

(市の責務)

第5条 市は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号。第15条第2号において「地教行法」という。)第1条の3第1項に規定する大綱及び第3条に定める基本理念にのっとり、いじめの防止等に関する総合的な施策を策定し、及び実施しなければならない。

2 市は、市立学校、保護者、市民、事業者及び関係機関等と連携を図り、協力して、いじめの防止等に取り組まなければならない。

3 市は、市立学校に対し、当該市立学校が定める学校いじめ防止基本方針(法第13条に規定する学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針をいう。次条第4項において同じ。)に基づき、具体的な取組又は達成の状況を評価し、必要に応じて指導又は助言を行わなければならない。

(市立学校の責務)

第6条 市立学校は、子ども及びその保護者に対し、いじめの防止等について、正しく理解させる教育活動等を実施しなければならない。

2 市立学校は、子どもがいじめに関する問題等を安心して相談できる環境を提供しなければならない。

3 市立学校は、市、子どもの保護者、市民、事業者及び関係機関等と連携を図り、協力して、いじめの防止等に取り組まなければならない。

4 市立学校は、学校いじめ防止基本方針を定めるとともに、必要に応じてこれを見直さなければならない。

5 市立学校は、校内におけるいじめの防止等に関する情報を共有するとともに、協力体制を構築しなければならない。

(保護者の責務)

第7条 保護者は、その保護する子どもの教育について第一義的責任を有するものであって、当該子どもとのコミュニケーションを積極的に図り、心の居場所(子どもが心身ともに安心して過ごせる場所をいう。)となる家庭を築くものとする。

2 保護者は、自らいじめを正しく理解し、その保護する子どもの規範意識の醸成及び高揚を図るものとする。

3 保護者は、市が行ういじめの防止等に関する取組に協力するものとする。

4 保護者は、その保護する子どもが在籍する学校と連携を図り、協力して、いじめの防止等に取り組むものとする。

5 保護者は、その保護する子どもにいじめの疑い等があると認められる場合は、速やかに市、学校又は関係機関等に情報を提供するものとする。

(市民及び事業者の役割)

第8条 市民及び事業者は、その活動する地域において、子どもに対する見守り等を行うことにより、子どもが安心して生活できる環境づくりに努めるものとする。

2 市民及び事業者は、市及び市立学校が行ういじめの防止等に関する取組に協力するものとする。

3 市民及び事業者は、いじめの疑い等があると認められる場合は、速やかに市、市立学校又は関係機関等に情報を提供するものとする。

(市におけるいじめの未然防止及びいじめの早期発見のための対策)

第9条 市は、いじめを未然に防止するため、次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) いじめの撲滅に向けた強化期間を定め、必要な取組を実施すること。

(2) 関係機関等と連携して、いじめに関する相談体制を整備し、当該関係機関等が行う相談事業を周知すること。

(3) 次条第1項に掲げる市立学校が行ういじめを未然に防止するための対策を支援すること。

(4) 市立学校、保護者、市民、警察その他の関係者と連携することにより、いじめを未然に防止するための対策を講ずること。

(5) 命の大切さについて学ぶ機会を提供すること。

(6) 第14条に規定する八潮市いじめ対策委員会を定期的に開催すること。

2 市は、いじめを早期に発見するため、次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) 市立学校、保護者、市民及び関係機関等と連携して、いじめに関する必要な体制を整備すること。

(2) いじめに関する情報を収集し、相談窓口等を設置すること。

(3) 市立学校に対し、指導主事等による指導又は助言をすること。

(市立学校におけるいじめの未然防止及びいじめの早期発見のための対策)

第10条 市立学校は、いじめを未然に防止するため、次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) 子どもを対象とした道徳教育、体験活動等の充実を図ること。

(2) 子どもの保護者及び市民と連携して、いじめの防止に関する活動を実施すること。

(3) 法第22条の規定に基づき、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、校内にいじめ対策委員会(第15条第1号及び第3号において「校内対策委員会」という。)を設置すること。

2 市立学校は、いじめを早期に発見するため、次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) 市、子どもの保護者、市民及び関係機関等と連携して、いじめに関する必要な体制を整備すること。

(2) 子ども及びその保護者に対し、積極的にいじめに関する相談の機会を提供すること。

(3) 教職員に対し、いじめに関する相談体制を整備するとともに、研修の機会を提供すること。

(インターネットを通じて行われるいじめへの対策)

第11条 市立学校は、インターネットを通じて行われるいじめについて、子どもを対象とした情報を収集し、適切な措置を講じなければならない。

2 市立学校は、子ども及びその保護者に対し、情報モラルに関する教育の充実及び啓発の推進を図らなければならない。

3 市は、前2項の対策を支援しなければならない。

4 保護者は、その保護する子どもに対し、インターネットの利用に関して、家庭での取決めを行う等の適切な措置を講ずるものとする。

(小中一貫教育におけるいじめへの対策)

第12条 市立学校は、小学校入学から中学校卒業までの期間において行う小中一貫教育(義務教育9年間を見通した計画的かつ継続的な教育をいう。)を行う上で、関係する市立学校間において効果的に情報を共有するなど、その特性を生かしたいじめの防止等に取り組まなければならない。

(いじめへの初期対応)

第13条 市立学校は、いじめの事実を確認したときは、直ちに次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) いじめを受けた子ども及びいじめを知らせた子どもの安全を確保するとともに、いじめを行った子どもに適切な指導をすること。

(2) いじめに関して必要な情報を収集し、及び教育委員会に報告し、いじめを受けた子ども及びその保護者並びにいじめを行った子ども及びその保護者に対し、それぞれの子どもが健全に成長することができるよう、適切に対応すること。

(3) いじめを受けた子どもが安心して学習できるよう、必要な措置を講ずること。

2 教育委員会は、前項第2号の報告を受けたときは、直ちに次に掲げる事項を行わなければならない。

(1) いじめに関係する市立学校に必要な支援を行い、適切に指示すること。

(2) 市立学校間の連携協力の体制を支援すること。

(3) いじめを行った子どもの保護者に対し、当該子どもの出席停止を命ずる等の必要な措置を講ずること。

(4) 市立学校以外の活動でいじめが行われたときは、そのいじめに関係する者との連携に努め、適切に対処すること。

(八潮市いじめ対策委員会)

第14条 教育委員会は、法第14条第3項の規定に基づき、地域におけるいじめの防止等を実効的に行うため、八潮市いじめ対策委員会を設置する。

(重大事態)

第15条 法第28条第1項に規定する重大事態(以下この条において「重大事態」という。)が発生したときは、次に掲げる事項を行うものとする。

(1) 市立学校は、校内対策委員会による調査を行うとともに、当該重大事態が発生した旨を教育委員会を経由して、直ちに市長に報告すること。

(2) 前号の報告を受けた場合においては、教育委員会は直ちに八潮市いじめ対策委員会に調査を行わせ、市長は直ちに地教行法第1条の4第1項に規定する総合教育会議を招集すること。

(3) 八潮市いじめ対策委員会は、前号の調査を行うときは校内対策委員会と連携するものとし、その結果については教育委員会を経由して、速やかに市長に報告すること。

(4) 市長及び教育委員会は、前号及び第17条第1項の結果を踏まえ、自らの権限及び責任において、重大事態への対処又は当該重大事態に準ずる事態の防止のため、必要な措置を講ずること。

(八潮の子どもをいじめから守る委員会)

第16条 市長は、前条第3号の報告を受けた場合において、必要があると認めるときは、法第30条第2項の規定に基づき、前条第3号の結果について調査を行うため、八潮の子どもをいじめから守る委員会を設置する。

(報告)

第17条 八潮の子どもをいじめから守る委員会は、前条の調査を行ったときは、その結果を速やかに市長に報告するものとする。

2 市長は、前項の報告を受けたときは、直ちにこれを議会に報告しなければならない。

(委任)

第18条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)

2 特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例(昭和40年条例第2号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

(八潮市附属機関設置条例の一部改正)

3 八潮市附属機関設置条例(昭和57年条例第15号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

八潮市みんなでいじめをなくすための条例

平成27年9月18日 条例第26号

(平成27年9月18日施行)