中川の希少植物「ノウルシ」を守っています
更新日:2017年2月1日
ノウルシとは
1.特徴
ウルシと言えば漆器などに使用される、漆の木が思い浮かびますが、こちらは草のノウルシ。
ノウルシはトウダイグサ科の多年草で、高さは30から40センチメートルになります。茎や根を切ると漆に似た白い液体(乳液)が出ることから、ノウルシの名がついています。
花の時期に黄色く色づくのは、つぼみの時期に花を守っていた葉っぱの一部である総苞(そうほう)と呼ばれる部分で、地味な花の代わりに目立って、花粉を運ぶ昆虫を呼び寄せる働きを持っています。
ノウルシは、種子からの繁殖、または根から新しい目が出て増えていくクローンによって増えます。
近年、湿地の減少とともにノウルシは数を減らしており、環境省のレッドリスト(環境省2012)で準絶滅危惧、埼玉県レッドデータブック植物編(埼玉県2011)で絶滅危惧2類に指定されてます。
開花時のノウルシ
2.ノウルシの1年
ノウルシは3月頃に発芽が始まり、3月下旬から4月上旬に花が咲きます。5月に実をつけた後、6月には地上部は枯れ、夏から翌春までは地下で根だけの状態で休眠します。
春先から夏前までのわずかな時期しか見られないノウルシのような植物は、スプリング・エフェメラル(春の妖精、春のはかない命)と呼ばれています。
発芽(3月)
開花(4月・観察会の様子)
結実(5月)
3.八潮のノウルシ
市内では1980年代に中川の河川敷(八條)で数箇所分布していることが確認されていましたが、環境の変化等により、近年ノウルシが生息している場所は1箇所になってしまいました。
さらに、唯一残っていたノウルシの自生地も、堤防をつくる工事によって影響を受ける場所にあたったため、地域住民や市民団体からノウルシの保全を望む声があがり、工事による自生地への影響を小さくすることと、工事で改変される部分のノウルシを上流側の移植地へ移すことになりました。この移植は2011年9月に行われました。
地図
【ノウルシ自生地】
もともとノウルシが生育していた場所です。中川に新しい堤防をつくる工事を行った際に工事の範囲を最小限にしました。残された場所はロープで囲い、自生地として保全しています。
【ノウルシ移植地】
日照や土壌の条件を調査し、上流側の生育に適した場所へ、工事の影響を受ける箇所のノウルシの株と表土を移しました。この場所をロープで囲い、移植地として保全しています。
4.ノウルシを守る活動
ノウルシは、湿った場所を好むため、湿地で多くみられます。また、春先に地面が明るいことが重要で、丈の高い草(ヨシやオギ、外来種のオオブタクサやセイタカアワダチソウなど)に覆われて地面が暗い状態になると姿を消してしまいます。
かつては中川が氾濫したときに河原がかき混ぜられ、丈の高い草が流されたり、倒れたりして、地面が明るい状態になり、ノウルシのような植物が生育できる環境ができていたと考えられています。現在では、洪水への対策が進んだため、河原をかき混ぜるほどの大きな水の流れが起きにくくなっています。
ノウルシが生育できるような明るい環境を保つためには、人の手によって丈の高い草を刈り取ったり、外来種を抜き取ったりする作業が必要です。2012年2月以降、地域の市民団体、国土交通省江戸川河川事務所、市が連携して、保全管理をしています。
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