八潮のむかしばなし(二十話)
更新日:2018年12月6日
江戸城二重橋の木
(西袋)
江戸幕府は、江戸城西の丸の二重橋かけかえのために、橋材の調達を命じた。
代官平岩右膳は、各触元名主へ橋材になりそうな大木の調査をさせた。八条領触元名主平太夫は、領内の各村に古木書きあげの提出をつげた。ところが各村からは、大木がないとの報告をうけた。
代官は、八条領内一の陣屋の木を出すようにおおせつけた。
西袋村名主平太夫は、村人にそのことを相談すると、
「それは、あんまりだ。西袋村の陣屋のうちのけやきは、村の目印の木だ。その木を切られちゃー、村の位置さーわかんなくなってしまうだ。」
「そうだ。どこの村でも古木は、ご神木になっているだ。陣屋の木を切られちゃー、村にどんな災いがおこるかしんねー。」
などと反対をされた。
そこで名主は、代官に、
「西袋村の陣屋の大木は、村が水につかったおりのひなんの木であります。そのため、大木をぜんぶ切るのではなく、一本だけはのこしてくれませんか。」
とお願いをし、ゆるされた。そのことを報告すると村人はたいへんよろこんだ。
大木の切り出しから荷送りは、村人そう出の仕事となった。切った木を笛や鉦のなり物にあわせて江戸城へ運んだ。
そして江戸見物ができた西袋の村人のじまん話の一つになった。
のこされた一本の大木は、たしか昭和40年ごろまではえていましたよ。