八潮のむかしばなし(七話)
更新日:2018年12月6日
馬場のお諏訪様
(中馬場)
中馬場のお諏訪様は、お産の神様といわれていてね。
むかし、なんでも信州の住人に高梨仲光という侍がおった。戦乱であれはてた郷里をすて、武州八条の馬場に宿をとった。
その晩、宿の女房が産床にむかい、難産で苦しんだ。仲光は、何とかしてやろうと思い、自分の肌守りの諏訪明神を臼の上にまつり、安産を願った。
ただちに霊験があらわれ、子が生まれた。夫婦は、お諏訪様の神慮を喜び、高梨氏の逗留を願った。
高梨仲光は、ついに馬場に住まいをかまえ、堀切仲光と名を変えた。
そこで延徳3年(1491)に妙光寺の日正上人と相談をして、信州の諏訪明神を勧請し、お社をたてた。守護神は、諏訪神社の諏訪像の胎内に安置し祀った。
諏訪大明神のご利益をもって、馬場の地では、難産になるかたが一人もなかった。それを聞いて、近郷の人々も、お産をする者はお参りをし、社地の土を持ち帰って安産を願うようになったそうな。