八潮のむかしばなし(五話)
更新日:2018年12月6日
古池と新池
(大瀬)
私が子供のころに、じい様から聞いた話だが・・・・。
大瀬付近にアヤジャというべっぴんな娘っこが住んでおった。アヤジャには、トネジャという仲のよい男がいた。
ときどき二人は川を下り、海へ出かけていたそうな。それは、人がうらやむほどのいい仲であったそうな。
それをよからぬと思っていた下総台地沿いに住んでおったフトジャは、アヤジャを自分の妻にしようと、ちょっかいをかけたそうな。
松戸付近から大瀬のトネジャのところへ来て、アヤジャを横取りしようとした。トネジャは、アヤジャを盗られては大変と、争ったんだと。
しょせん体のでっけいフトジャが勝ち、いやがるアヤジャを連れ、松戸へ引き上げた。
トネジャは、アヤジャをうばわれた悲しみで土中深くもぐり込んでしまったんだとよ。
そのうわさを耳にしたアヤジャは、いたたまれず、フトジャの目をかすめ、トネジャがもぐり込んだ池に来て、アヤジャも土中深くもぐり込んだんだと。
その穴も深い穴になったんだと。
村人たちは、アヤジャが二度とフトジャに連れていかれないように池の周りに菖蒲を植えて供養したそうな。そしてトネジャの池を「古池」と名付け、アヤジャの池を「新池」と呼んだんだそうな。それから後も、たびたびアヤジャを求めてフトジャが来たが、池に菖蒲が植えられているので近寄ることができなかったんだとよ。
古池と新池は、それはひゃっこくきれいな水がわき、大瀬の村人の飲み水になったんだと。村人たちは、毎日、この古池と新池の水をくみに来て、アヤジャとトネジャの話をしあい、水の恵みに感謝をしていたんだと。
いつとはなく、村人の口からその話題が消えると、古池と新池の水がにごりだしたんだとさ。それから大瀬付近では、赤ちゃけた井戸水を飲むようになったんだとよ。
よくじい様が話をしていたっけなー。水の恵みに感謝しねーと、家の井戸水が赤ちゃけるとよ。